キモ¥70ホルモン やまき大阪府 今池
西成区
知旅の恥はかき捨て。阿倍野から今池を歩くと驚きの連続だった。新しい高層マンションが乱立し、そのエリアを抜けた一段低い土地には日本最大級の「遊郭街」、その名も「青春通り」だ。全ての小屋のトビラは開け放たれ、私が通ると店頭座敷に観音のようにおわします若い娘さんからお誘いがかかる。如来ではなく女来である。このお声掛けが百数メートル数十軒続き、さすがに我慢負けしてフラッと身体が傾きそうな頃に飛田本通商店街に突き当たる。この遊郭道と並行するのは軒並みシャッターが閉まったアーケード、新開筋商店街。ここから先、元気なのはカラオケ居酒屋。これもすごい店舗数が軒を連ね、そして全てのカラオケが稼働し、店々からはおっちゃんたちの元気な歌声が聞こえてくる。真っ昼間から街には活気があふれる。その先の今池駅周辺に出ると、今度は
ホルモン焼き屋が多くなる。さらに真っ直ぐ進むと萩之茶屋商店街の入り口に、のぞかずにはいられない
鉄板焼きの
立ち飲みがあった。
後に知ったことだが、ここから先の地区は写真撮影をしてはならないエリア「あいりん地区(釜ヶ崎)」。それってここだったのか。危なく知らずに胸からカメラぶら下げて闊歩するところだった。どうなっていたか…想像がつかない。旅の恥はかき捨て、どころではすまないだろう。様子を見に少し立ち入ったが、確かに旅の者が不用意に観光する雰囲気ではなかった。東京の三谷、泪橋の辺りとはまた違う空気感がそこにはあった。
西成とはこの辺りのことだったのか…。
さて、その入り口にある
立ち飲みは「
ホルモン やまき」という屋号だ。ここまでは観光客でも大丈夫であろう。屋台スタイルに近い「
やまき」の人だかりに潜り込んでみよう。

しかしここも結構ディープ。ご年配の大将が鉄板に次から次へと肉を放る。煙に巻かれるその正体は、一つは
ホルモン串。テッチャンだ。もう一つは得体の知れない内臓だ。大将の背後に貼ってあるメニューを見れば、食べ物は2種類しかない。「ホルモン」¥70、「キモ」¥70。つまり得体の知れない内臓のかたまりは、レバーだ。

オーダーの仕方は、飲み物をコールすれば大将が出してくれる。缶ビールはちゃんと冷蔵庫から出される。次いで「ホルモン」は自分で「もらうよ」などと申請して自分で鉄板から串を取り上げる。食べ終えた串は自分の前に置いておくルール。

「キモ」は大将に伝えなければ食べられない。伝えると、レバーのかたまりの山から大将が一欠片取り出し、ヘラでいくつかにカットしてくれ、それが目の前の鉄板に差し出される。これを串で刺していただく。要するに、串の数で勘定している。


自分の近くにあるタレにどぶっと漬けていただくようである。このタレ、見ていると、一味唐辛子、にんにくが時折大量投入されている。命のタレ、である。これに串やキモを一度くぐらせていただく。
あっ。うむっ!これは!美味いっ!特にレバー。いや、キモ。この雰囲気が後押しをしていることもあるが、シチュエーションが変わっても絶対に美味いぞこれは。ただ、なんとなくこのキモはレアでは食べてはならない気がする。この下味のタレと、鉄板での焼き具合と、漬けダレの三拍子揃ってこそである。参った。


今日はおそらくいつもに比べて客が少ないのではないか。この強烈な熱射日。逆に私には運が良かったといえる。普通に自分のペースで滞在できたから。
大抵の客は20分と滞在しない。チャッと食ってチャッと帰る。ご常連は新参客や大将との輪を大切にしながらようしゃべっている。
大阪らしい雰囲気だ。大将は黙々と焼いているがやはり
大阪人、たまにご常連に「なんでやねん」とか「あるかいな」とか小声ではにかんでツッコんでいる。
今池の番人「やまき」。ここから先は大人の世界だ。私は先へは進めない。なぜなら入口に「やまき」があるから。
最寄駅 阪堺電気軌道「今池」(
大阪市
西成区)
衛生感・落ち着き度 4
価格設定の適正度 10
料理の味・誠実度 8
好き度・リピート感 8
やまき 今池店 (ホルモン / 今池駅、今船駅、萩ノ茶屋駅)
昼総合点★★★★☆ 4.1