タカセ ステーキ弁当¥980レストラン タカセ 板橋店下板橋
四角い
弁当の左上にある牛ステーキをもったいぶって突っついている。大きなウィンドウからは、わざとらしい陽の光は差し込まず、そぼふる雨の情景が現実味を帯びている。子供の頃、親に連れて行ってもらった
レストランを思い出す。
ゲームセンターが併設された長崎屋8階の「おあしす」。入り口の食品サンプルに釘付けになった「不二屋
レストラン」。中華鍋の音に鼻をふくらませた中華「喜楽」。すべて武蔵小金井の郷愁。数ヶ月に一遍の贅沢な家族の時間。窓の雨粒を見ながら、なぜか今の幸福に申しわけない気分になる。しかし、時代の流れに後押しされながら頑張ってきた自分がいる気もする。
タカセは大正6年創業の老舗洋菓子店。デモクラシーも大戦も高度経済成長もバブル崩壊も、すべて知っている。メニューの表紙を飾るのは、東郷青児の絵だ。初代が友好関係にあったそうだ。その歴史が、この四角い
弁当に詰まっている。
昔はお子様
ランチの次に魅力だったのはグラタン。ここのショーケースでも迷った。大人になると、純粋に本音で選択できないしがらみが生じる。本当はグラタンで良かったのに、相手のふところに迫って、相手の良さを引き出そうとする。だから今回は、
弁当なのだ。「今回は」が肝である。次回があるから、まずは相手の言いぶんを聞く。子供はそんな大人じゃない。次回なんて考えない。今。今がすべて。だからグラタンだ。
ここの
弁当は、趣きがある。味のことはいい。いや美味い。しかしこの弁当に詰まっているのは、「
レストラン」そのものの暖かさ。子供はグラタンやスパゲッティに夢中で、大人は一緒に興奮する事を抑えて、子供がうらやましがらない大人の品をオーダーする。子供も大人も胸躍らせる、年に数度のあの高揚感。あの感じが、
タカセにはある。
食後のコーヒーを飲みながら再び外に目をやると、道に子供は歩いていない。店内にはベビーカーで来店する方はいたものの、家族団らんの景色は少ない。大人同士がほとんどだ。現代の子供たちは、どんな外食に胸躍らせているのだろうか。
春とはいえ、まだ寒い。



チーズハンバーグステーキ ¥1,200
最寄駅 JR「板橋」・東武東上線「下板橋」(板橋区)
衛生感・落ち着き度 7
価格設定の適正度 7
料理の味・誠実度 6
好き度・リピート感 7
「レストラン タカセ」ホームページ CLIC → http://www.takase-yogashi.com/itabashi.html
レストラン タカセ 板橋店 (洋食 / 下板橋駅、板橋駅、新板橋駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.7