チャーハン¥580珍々亭板橋
小豆沢紺碧と深紅の染め分け暖簾に
老舗の自信を感じて、衝動的にドアを開けました。
客テーブルで新聞を読んでいた女将さんがびっくりしたようにこちらを見ました。ゆっくり新聞を閉じながら、ようやく「いらっしゃい」。椅子はバラバラに置かれ、破れた座面をガムテープで修復。テーブルは軽く拭いた程度で油感はとれません。ご主人は女将さんの言葉を何回か聞き返します。これが昭和のレストランです。ちばてつやの「のたり松太郎」に出てくる定食屋そのものです。「もてなされる」ことに慣れてしまった平成時代の私たちは、食事代におもてなしのサービス代が含まれていると考えます。しかしここは違います。自分たちの生活圏にお客さんが入って来た、というような自然体の営業です。
ラーメンを注文するのは賭けなので、チャーハンを注文しました。ラーメン、ワンタン、塩ラーメンは480円です。少し冷えたお冷やがコトリと置かれます。この「少し」がやたらありがたく感じます。奥から中華鍋とお玉がぶつかり合うあの音が聞こえます。5分程度でチャーハンが配膳されます。遅れること30秒、こぼさないようゆっくりと女将さんがスープを持ってきます。いただきます。
焦げ目はありませんがわずかに表面が堅くなっています。いい火の通りです。一角を崩して食べ始めます。パラパラではなくモチモチです。甘さ、しょっぱさ、ともに普通です。平均以上でも以下でもない、朴訥なチャーハンです。具材は、玉子と少々のねぎ、のみ。肉はなし。そういえば、昔のチャーハンは「肉入り」と冠についていたものもあった気がします。肉が入るのは、特別なことなんです。これを物足りないと思うのは、飽食時代に生きて来た私たちの悪いクセです。
と、このチャーハンでこんなに長い文章が書けるとは思ってもみませんでした。ご主人、女将さん、もうちょっとだけ、営業に気を払ってみて下さい。そして1日でも長く、1人でも多く、お店が繁盛することを切に願います。がんばって下さい。


最寄駅 都営三田線「
志村坂上」(板橋区)
訪問時間 11:40
待ち時間 0分
衛生感・落ち着き度 2
価格設定の適正度 7
料理の味・誠実度 4
好き度・リピート感 3
珍々亭 (中華料理 / 志村坂上駅、北赤羽駅)
昼総合点★★★☆☆ 3.2